会社で働く以上は上司や部下との縦の関係、他部門との横の関係など、根回しや調整を求められる局面があります。
できれば揉め事を起こすことなく業務を進めたいものです。
そこでこの記事では『行動経済学』を活かした社内での立ち回り方を紹介します。
行動経済学を活用することで業務がスムーズになるだけでなく、社内でのあなたの評価も爆上がりすること間違いなしです。
なお、この記事は以下の書籍を参考にしています。
行動経済学とは
行動経済学とは『経済は人の心で動く』という考えに基づいたマーケティング手法です。
一般的な経済学では、人間は常に合理的に行動する前提で理論が体系化されています。
しかし時には感情的になったりと、人間は必ずしも合理的に行動するとは限りません。
行動経済学はこれまでの経済学の考え方に加え、人の心情という心理学的側面を盛り込んだ新しい経済学です。
【これだけは理解しておきたい】行動経済学の仕組み
行動経済学では『認知✖️状況✖️感情』の組み合わせによって人の行動を読み解けるとされています。
逆に言えばこの3つを理解することで、人間関係における課題の大半は解決できます。
認知=直感的か論理的か
経済学では人は合理的に判断すると定義されていますが、行動経済学では時と場合によって論理と直感を使い分けるとされています。
例えば衝動買いをして家に帰ったあと、「何でこんなに買ってしまったんだろう」と後悔したことはありませんか?
これは直感で行動したことが原因で起きる症状です。
状況=環境次第で判断が変わる
何かを選ぶとき、人は自分の判断で選んでいると思うはずです。
しかし、必ずしもそうではない場合があります。
人は無意識に見栄を張ったり、周囲に同調する傾向があります。
同じ選択肢であっても、一人でいるときと周囲に誰かがいる場合とでは異なる判断を下すことも少なくありません。
集団行動などは正に行動経済学の一種です。
感情=喜怒哀楽で行動が変わる
イライラした時に冷静な判断ができないことはありませんか?
楽しい時に勢いで判断することはありませんか?
これらは全て論理的ではなく感情をコントロールできずに判断をくだしている状態です。
【知って得する】人間の心理
認知×状況×感情次第で人の行動に変化がおきることを理解したうえで行動経済学をビジネスにどう活かすのか、多くの書籍やメディアで紹介されています。
行動経済学の研究で体系化されている代表的な人間の心理を解説します。
以下に解説する手法はあなたにもきっと思い当たる節があるはずです。
損失の回避
人は不確実な利益よりもリスクを回避して確実性を優先する傾向にあるという考え方です。
例えば以下の選択肢の場合、あなたはどちらを選びますか?
- 確実に10万円がもらえる
- 50%の確率で20万円もらえるが、50%の確率で1円ももらえない
この場合は大半の人が1を選ぶといわれています。
基準値の設定
最初に提示された数字を基準として、そのあとの情報を評価する考え方です。
『通常価格10万円の商品が今なら5万円で買える』などといったセールは、単に5万円と言われるよりもお得に感じます。
また、同じ商品でも質の違いで『5000円、3000円、1000円』と価格差が設定されていた場合、何となく間を取って3000円の商品を選んでしまうことはありませんか?
人は基準となる数値を無意識に定めて判断する習性があり、中でも選択肢がある場合は中間を選ぶ傾向が強いとされています。
同調効果
多くの人から支持や注目が集まっていることに対して、さらに注目度が集まるという考え方です。
行列ができているお店に並んでみたくなる。
口コミで有名な商品をついつい買ってしまう。
みんながそうするからと多くの人が選択したものに対し、本来の価値よりも強い魅力を感じてしまう状態です。
現在志向
将来の利益よりも目先の利益を優先させてしまったり、面倒だからといって後回しにしてしまう考え方です。
将来良い学校に入るために勉強を頑張るよりも、目の前にゲームがあるとついつい遊んでしまうというのは、正に今の利益を優先した行動です。
また、人間は変化を好みません。
例えばビジネスでは書類やハンコのデジタル化が進んでいますが、昔ながらのやり方に固執する人が一定数存在します。
このケースも現在志向に捉われた状態といえます。
【実践編】行動経済学を仕事に活かす具体的な方法
行動経済学は人間の心理を巧みに利用したものです。
行動経済学はビジネスで利益を上げるだけでなく、社内営業にも活用できます。
今日からできる具体的な実践法を紹介します。
損失に焦点を当てる(損失の回避)
運用の見直しなど、業務ルールを変更する際は少なからず抵抗勢力がいるものです。
抵抗勢力にルールを順守してもらうためには、強制するのではなく不利益になる仕組みを構築するといいでしょう。
コロナの流行時、陰性証明を提示しなければ入店を許可しないという小売や飲食の店舗がありました。
これは検査を強制はしないが、検査しなければお店に入れないという『損失』に焦点を当てた手法です。
このように無理やり強制するのではなく損失に焦点を当てることで、抵抗勢力にもルールを順守してもらいやすくなります。
交渉事は選択肢を3つ提示する(基準値の設定)
人は潜在的に指示されることを嫌います。
自分で選んで決定したがる習性がある一方、選択肢が多すぎると選べないという面倒な一面も兼ね備えています。
この習性を逆手に取り、顧客や上司に提案をする際は3つの選択肢を用意するのがちょうどいいです。
また、その際には選択してもらいたい案を軸にして、『案①・案②(本命)・案③』という内容で提案することで成功確率がぐっと上がります。
最初か最後か(基準値の設定)
『初頭効果』と『親近効果』という言葉があります。
最初の情報にウエイトが置かれることを初頭効果、最後の情報にウエイトが置かれることを親近効果といいます。
例えば面接では一番最初か最後が印象に残りやすいとされており、これは初頭効果と親近効果による影響です。
プレゼンなどで活かせる手法のため、表彰や選定されたいシチュエーションでは順番を意識するといいでしょう。
しかし、注意すべきことがあります。
状況次第では最初のプレゼンが基準値とされることがあります。
採点式の場合は不利になる可能性があるため、立ち居振る舞いや雰囲気など、定性的な判断が重要視されるケースに限定するといいでしょう。
思い込みで評価が変わる(同調効果)
普段からやさしい人が見せるやさしさより、不良がたまに見せるやさしさのほうが印象に残るなどと恋愛本で書かれていたりします。
普段からやさしい人にとっては少しモヤっとする話かもしれませんが、このように思い込みで人の評価は変わるものです。
これを仕事で活かさない手はありません。
上司に評価されたいと思う場合、あなたの評判が周囲からも良ければその噂は上司の耳にも届きます。
また、普段はだらしない部分があっても、ここぞという場面で成果を上げれば普段のマイナスな印象を打ち消すことができます。
上司の外堀を埋める、インパクトを残すことを意識してみてください。
特定の選択肢をあらかじめ提示する(現在志向)
損失の回避と通じる部分がありますが、『〇〇してください』といった依頼の仕方では抵抗を感じるものです。
依頼をスムーズに進めるための手段として、利用者が意図的に変更しない限り依頼が実行されるという方法が効果的です。
例えばECサイトなどで商品を購入する際、DM送付の有無を選択する欄が表示されます。
その際にDM送付を希望する場合にチェックをするのではなく、あらかじめデフォルトでチェックがされ、送付を希望しない場合は外すという仕様になっているケースがあります。
これは消費者が意図的にDMを不要と選択しない限りDMが送付されるという仕組みで、販売側にとって広告宣伝をしたいという思惑と、消費者の手間や面倒の解消といった心理をうまく両立した手法です。
仕事でも周囲への協力や依頼事項は頻繁に発生するため、紹介した方法は様々な場面で応用が利きます。
行動経済学は一度学べば汎用性の高い知識になる
『行動経済学』と聞いて、堅苦しいものと感じられた方がいるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。
行動経済学の本質は、人の感情に寄り添い、人の行動を紐解いていくことにあります。
行動経済学は仕事だけでなく、友人知人との付き合い、異性へのアプローチなど様々な局面で活用できる汎用性の高い知識です。
役立つこと間違いなしの知識ですので、行動経済学をより深く知りたいという方は以下の書籍をおすすめします。
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